新NISAで高配当投資:成長投資枠とつみたて投資枠の賢い使い分けガイド
高配当投資にご興味をお持ちの皆様、こんにちは。当サイト「高配当投資 税金と制度ガイド」では、高配当投資における税金や制度について、分かりやすく解説しています。
2024年から新しいNISA制度(以下、新NISA)が始まりました。高配当投資においても、新NISAの非課税メリットを最大限に活用したいとお考えの方も多いのではないでしょうか。新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」があり、それぞれ特徴が異なります。
この記事では、新NISAで高配当投資を行う際に、成長投資枠とつみたて投資枠をどのように使い分けるのが賢明かについて解説します。ご自身の投資目的や状況に合わせて、最適な戦略を考える参考としていただければ幸いです。
新NISA制度の概要と二つの投資枠
まずは、新NISA制度の基本的な仕組みと、成長投資枠・つみたて投資枠について確認しましょう。
新NISAは、年間最大360万円(成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)の投資から得られる利益(配当金や売却益)が、生涯にわたる1800万円の非課税保有限度額の範囲内で無期限に非課税となる制度です。
この制度には、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という二つの異なる投資枠が設けられています。
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成長投資枠:
- 年間投資枠:240万円
- 投資対象:上場株式、投資信託など(一部対象外あり)
- 購入方法:一括購入、積立購入のどちらでも可能
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つみたて投資枠:
- 年間投資枠:120万円
- 投資対象:金融庁が定めた、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託
- 購入方法:積立購入のみ
高配当投資を考えた場合、どちらの枠が高配当株や高配当ETFへの投資に適しているのか、あるいはどのように組み合わせて活用すれば良いのか、悩むポイントになるかと思います。
高配当投資と各投資枠との相性
高配当投資の目的は、主に企業からの配当金という形で安定したキャッシュフローを得ること、そして将来的な株価の値上がりによる売却益も期待することにあります。この目的に照らし合わせて、各投資枠との相性を考えてみましょう。
成長投資枠と高配当投資
成長投資枠は、上場株式や幅広い投資信託が投資対象となります。これは、個別企業の高配当株や、高配当利回りを追求する上場投資信託(ETF) に投資したい場合に適しています。
成長投資枠で高配当銘柄に投資することで、以下の非課税メリットを享受できます。
- 受け取る配当金が非課税になる: 通常、配当金には約20%の税金がかかりますが、新NISA口座で受け取る配当金は非課税です。高配当投資のキャッシュフローメリットを最大限に活かせます。
- 売却益が非課税になる: もし保有している高配当株や高配当ETFの値上がりに伴って売却した場合、その売却益にも税金はかかりません。
高配当投資において、特定の個別株を選びたい場合や、多様な高配当ETFの中から選びたい場合には、成長投資枠が主要な選択肢となります。
つみたて投資枠と高配当投資
つみたて投資枠は、金融庁が定める一定の基準を満たした投資信託のみが対象です。これらの投資信託は、主に市場全体のインデックス(株価指数など)に連動することを目指すものが中心であり、「高配当」を運用方針の最前面に掲げている商品は限定的です。
つみたて投資枠で投資する場合、以下のような特徴があります。
- 投資対象が限定される: 個別高配当株や、高配当に特化した多くのETFは、つみたて投資枠の対象外です。
- 積立投資が基本: 毎月一定額を自動的に購入するスタイルが中心です。
- 分配金の扱いに注意が必要な場合も: 投資信託の分配金には、受け取らずにファンド内で再投資されるタイプが多くあります。この場合も非課税メリットは享受できますが、高配当投資で期待される「現金としての配当金受け取り」によるキャッシュフローは得られません。ただし、中には分配金を定期的に支払うタイプの商品もあります。
したがって、つみたて投資枠は、高配当によるキャッシュフローを直接的に得るというよりは、長期的な資産形成において、値上がり益や分配金の再投資による複利効果を非課税で追求するのに向いています。高配当投資という観点では、選択肢は狭まります。
新NISAにおける成長投資枠とつみたて投資枠の具体的な使い分け
これらの特徴を踏まえ、新NISAの高配当投資における使い分け方をいくつかご紹介します。ご自身の投資目的や状況に合わせて検討してみてください。
考え方1:投資の目的で使い分ける
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主な目的が配当金収入(キャッシュフロー)の場合:
- 成長投資枠を主に使用する のが有効です。年間240万円の枠内で、個別高配当株や高配当ETFに投資します。受け取った配当金は非課税となり、そのまま生活費や他の投資に充てることができます。
- つみたて投資枠は、もし余裕があれば他の投資目標(例えば、老後資金のための分散投資)のために、インデックス投資信託などに積み立てることも検討できます。
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主な目的が資産形成(将来の資産増加)で、その手段として高配当銘柄も検討する場合:
- つみたて投資枠をメインに使用する ことで、市場全体への分散投資による安定的な資産形成を目指します。年間120万円の枠を使い切ることを検討します。
- 成長投資枠では、資産形成の一部として高配当銘柄も組み入れる という考え方です。例えば、配当金を再投資する方針で高配当ETFを購入したり、長期的な値上がりも期待できる高配当株に投資したりします。
考え方2:投資対象とリスク許容度で使い分ける
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個別株投資に抵抗がない、または積極的に行いたい場合:
- 成長投資枠を積極的に活用します。 個別株は高い配当利回りが期待できる反面、企業の業績悪化などによる株価下落や減配のリスクもあります。リスクを理解した上で、分散投資を行いながら成長投資枠で個別高配当株に投資します。高配当ETFも選択肢に入ります。
- つみたて投資枠は、より低リスクで分散された投資信託による資産形成を補完する役割として利用できます。
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個別株投資は避けたい、より分散されたリスクの低い投資をしたい場合:
- つみたて投資枠をメインに使用します。 金融庁が指定する投資信託は、一定の基準を満たしており、比較的リスクが抑えられています。
- 成長投資枠では、個別株ではなく、分散された高配当ETFを中心に投資する ことを検討します。高配当型の投資信託が対象であれば、そちらも選択肢となります。
具体的な組み合わせ例
いくつかの具体的な組み合わせ例を提示します。
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例1:高配当金によるキャッシュフロー重視型
- 成長投資枠:年間240万円を高配当個別株や高配当ETFに投資
- つみたて投資枠:利用しない、または少額をインデックス投資信託に積み立て
- 戦略:非課税の配当金収入を生活費等に充てる
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例2:バランス型(キャッシュフロー+資産形成)
- 成長投資枠:年間240万円を高配当個別株や高配当ETFに投資(配当金は一部再投資または利用)
- つみたて投資枠:年間120万円をインデックス投資信託に積み立て
- 戦略:成長投資枠で高配当メリットを享受しつつ、つみたて投資枠で長期的な分散投資による資産形成も行う
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例3:つみたて枠メイン+高配当ETF
- 成長投資枠:年間240万円の範囲で高配当ETFに投資
- つみたて投資枠:年間120万円をインデックス投資信託に積み立て
- 戦略:つみたて枠で安定運用を図りつつ、成長投資枠で高配当ETFによる配当収入(非課税)と分散投資を両立させる
これらの例はあくまで一例です。ご自身の年齢、収入、リスク許容度、投資経験などを考慮して、最適なポートフォリオと投資枠の使い分けを検討することが重要です。
新NISAで高配当投資を活用する際の注意点
新NISAは高配当投資にとって大変有利な制度ですが、いくつかの注意点があります。
- 非課税保有限度額の上限: 1800万円という上限があるため、無計画に投資すると枠を使い切ってしまう可能性があります。長期的な視点で、どの銘柄をどの枠で、いつ頃購入するかを計画することが大切です。
- 投資リスク: NISA制度は税金が非課税になる制度であり、投資そのもののリスクがなくなるわけではありません。高配当株であっても、株価が下落したり、配当金が減額されたり、無配になったりするリスクは存在します。投資対象は慎重に選ぶ必要があります。
- 分散投資: 特定の銘柄や分野に集中投資するのではなく、複数の銘柄や分野に分散投資することで、リスクを軽減することが推奨されます。成長投資枠で個別株に投資する場合でも、複数の銘柄に分散することを心がけましょう。
- 配当金の受け取り方法: NISA口座で購入した株式等の配当金を非課税で受け取るためには、「証券口座で受け取る(株式数比例配分方式)」を選択する必要があります。その他の受け取り方法(郵便局での受け取りや登録配当金受領口座方式など)を選択すると、課税されてしまう場合がありますので注意が必要です。
まとめ
新NISA制度は、高配当投資の非課税メリットを最大限に引き出すための強力なツールです。特に成長投資枠は、個別高配当株や高配当ETFへの投資に適しており、受け取る配当金を非課税にできる大きなメリットがあります。
つみたて投資枠は、直接的な高配当キャッシュフローには向きにくい傾向がありますが、長期的な資産形成において非課税で運用できるメリットがあります。
高配当投資を新NISAで行う際には、ご自身の「配当金によるキャッシュフローを重視するのか」「長期的な資産形成を重視するのか」といった投資目的や、リスク許容度、投資したい対象によって、成長投資枠とつみたて投資枠を賢く使い分けることが重要です。
この記事で解説した内容が、皆様の新NISAにおける高配当投資戦略の参考となれば幸いです。ご自身の状況に合わせて、じっくりと検討を進めてください。
次のステップ
- ご利用の証券会社のウェブサイトなどで、新NISA口座の開設状況や設定(特に配当金の受け取り方法)をご確認ください。
- ご自身の投資目的やリスク許容度を踏まえ、成長投資枠とつみたて投資枠でどのような銘柄に、どのくらいの金額を投資したいか、具体的なプランを検討してみましょう。
- 具体的な投資対象(個別高配当株、高配当ETF、つみたて投資枠対象の投資信託など)について、さらに情報を集め、慎重に選定を進めてください。