高配当投資 特定口座(源泉徴収あり):源泉徴収された税額はどこで確認?確定申告で還付されるケースを解説
高配当投資をされている方の多くは、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を利用されているかと存じます。この口座では、配当金や株式の売却益にかかる税金が、受け取る際に自動的に差し引かれます。これを「源泉徴収」と呼びます。
源泉徴収されるため、原則としてご自身で確定申告を行う必要がなく、非常に便利な仕組みです。しかし、「実際にいくら税金が引かれたのだろうか」「引かれすぎていることはないのだろうか」「確定申告をすると税金が戻ってくることがあると聞いたけれど、どうすれば良いのだろう」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、高配当投資において特定口座(源泉徴収あり)で源泉徴収された税額をどのように確認するのか、そして、確定申告を行うことで税金が還付(返還)されるのはどのようなケースなのかについて、分かりやすく解説いたします。
特定口座(源泉徴収あり)の基本的な仕組み
まず、特定口座(源泉徴収あり)の仕組みを簡単にご説明します。この口座では、証券会社がお客様に代わって、株式等の取引で発生した利益(配当所得や譲渡所得)にかかる税金計算を行い、自動的に税金を徴収して税務署に納付します。
- 配当所得: 保有する株式等から得られる配当金にかかる税金です。通常、配当金の支払い時に税金が差し引かれます。
- 譲渡所得: 株式等を売却した際に、購入価格(取得価額)よりも高く売れた場合に生じる利益にかかる税金です。売却代金の受け渡し時に税金が差し引かれます。
これらの税金が取引ごとに自動で差し引かれるため、原則として確定申告は不要となります。
源泉徴収された税額はどこで確認できるのか?
特定口座(源泉徴収あり)で源泉徴収された税額は、主に以下の方法で確認できます。
1. 特定口座年間取引報告書
最も重要かつ確定申告でも使用する書類が「特定口座年間取引報告書」です。これは証券会社が、1月1日から12月31日までの1年間の特定口座における損益計算結果と、それに対する源泉徴収税額をまとめた書類です。
この報告書には、以下のような項目が記載されています。(証券会社によってフォーマットは多少異なります)
- 年間合計の譲渡損益額
- 年間合計の譲渡所得税徴収税額、住民税徴収税額
- 年間合計の配当等合計額
- 年間合計の配当等所得税徴収税額、住民税徴収税額
源泉徴収された税額は、「源泉徴収税額」といった項目名で、所得税と住民税に分けて記載されています。この書類は、通常、翌年の1月下旬頃に証券会社から郵送されるか、ウェブサイトの取引画面から電子交付されます。
2. 取引報告書・支払通知書
個々の取引ごと、または配当金の支払いごとに発行される書類でも、源泉徴収税額を確認できます。
- 取引報告書: 株式等の売却取引が発生した際に発行される書類です。売却代金から差し引かれた譲渡所得にかかる税額が記載されています。
- 配当金支払通知書: 株式等の配当金が支払われる際に発行される書類です。配当金額とそこから差し引かれた配当所得にかかる税額が記載されています。
これらの書類は、日々の取引や配当金の確認に便利ですが、年間合計の税額を確認するには、年間取引報告書が効率的です。
3. 証券会社のウェブサイトや取引ツール
多くの証券会社では、ウェブサイトのマイページや取引ツール上で、特定口座の年間損益や源泉徴収税額をリアルタイムまたは過去分を含めて確認できる機能を提供しています。「特定口座損益」「取引履歴」「報告書閲覧」といったメニューを探してみてください。
特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告で税金が還付されるケース
特定口座(源泉徴収あり)は確定申告不要が原則ですが、あえて確定申告を行うことで、源泉徴収された税金の一部または全部が還付されるケースがあります。高配当投資に関連する主なケースは以下の通りです。
1. 年間の譲渡損失と配当所得の損益通算を行う場合
1年間の株式等の取引で、売却によって損失(譲渡損失)が発生し、一方で配当所得も得ている場合、その譲渡損失と配当所得を相殺(損益通算)することができます。
特定口座(源泉徴収あり)では、通常、譲渡所得と配当所得はそれぞれ単独で税金が計算・源泉徴収されます。しかし、確定申告で損益通算を行うことで、配当所得にかかった税金の一部が還付される可能性があります。
例えば、年間で株式売却により10万円の損失が発生し、同時に配当金で10万円の所得があり、それぞれから税金が源泉徴収されているとします。確定申告で損益通算を行えば、所得がゼロとなり、配当所得から源泉徴収された税金が還付されることになります。
この損益通算を行うためには、確定申告が必要です。特定口座年間取引報告書には、譲渡損益と配当所得の合計額が記載されており、確定申告書の作成に利用できます。
2. 譲渡損失の繰越控除を行う場合
その年の譲渡損失が、損益通算を行っても控除しきれなかった場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。繰り越した損失は、翌年以降の株式等の譲渡所得や配当所得と相殺できます。
この「繰越控除」の適用を受けるためには、損失が発生した年から連続して確定申告を行う必要があります。(損失が発生した年に確定申告をしなかった場合、繰越控除はできません)
将来的に配当所得や譲渡所得が得られる見込みがある場合は、損失が出た年でも確定申告を行い、繰越控除の適用を受けておくことで、将来の税金負担を軽減できる可能性があります。
3. 配当控除の適用を受ける場合(総合課税を選択)
国内株式の配当金については、所得税において一定の「配当控除」が適用される場合があります。これは、法人税と所得税で二重に課税されている状態を調整するための制度です。
特定口座(源泉徴収あり)では、通常「申告分離課税」として税金が計算・源泉徴収されています。配当控除の適用を受けるためには、配当所得を他の所得と合算して税金を計算する「総合課税」を選択して確定申告を行う必要があります。
ただし、総合課税を選択すると、税率が他の所得と合算した合計所得金額によって決まる「累進課税」となるため、所得が多い方の場合はかえって税金が高くなる可能性もあります。また、申告分離課税として申告した場合に受けられる譲渡損失との損益通算はできなくなります。
一般的には、所得が比較的低い方や、配当所得以外の株式等の譲渡所得がない方にとって、配当控除のメリットが大きくなる傾向があります。ご自身の所得状況や他の取引状況を考慮して判断する必要があります。
確定申告を行う際の注意点
- 特定口座年間取引報告書が必要: 確定申告を行う際には、証券会社から発行される特定口座年間取引報告書が必須の書類となります。この書類に記載されている情報を基に、所得金額や源泉徴収税額を申告書に記載します。
- 申告不要制度との選択: 特定口座(源泉徴収あり)の場合、原則として確定申告は不要です。損益通算や配当控除など、申告を行うことによるメリットがある場合にのみ、ご自身の判断で申告を選択します。申告を行うと、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料、各種行政サービスに影響が出る可能性もありますので、慎重に判断が必要です。
- 申告期限: 確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。(還付申告の場合は、申告ができるようになった日から5年間提出できます)
まとめ
高配当投資を特定口座(源泉徴収あり)で行っている場合、源泉徴収された税額は、年間取引報告書や個別の取引・支払通知書、証券会社のウェブサイトで確認できます。これらの書類は、ご自身の税金負担を把握するためにも大切です。
また、特定口座(源泉徴収あり)は原則として確定申告不要で便利ですが、年間に損失がある場合や配当控除の適用を受けたい場合など、あえて確定申告を行うことで源泉徴収された税金が還付されるケースがあります。特に、譲渡損失と配当所得の損益通算は、多くの方にとって税金を取り戻すチャンスとなる可能性があります。
ご自身の取引状況を確認し、必要に応じて確定申告を検討することで、高配当投資における税金の負担をより適切に管理することが可能になります。不明な点があれば、税務署や税理士に相談することも検討してみてください。