高配当投資の確定申告:配当所得を申告書にどう書く?記載方法をステップ解説
高配当投資をされている方の中には、確定申告が必要となるケースがあります。特に、特定口座の「源泉徴収なし」を選択している場合や、一般口座で取引している場合、あるいは配当所得について総合課税や申告分離課税を選択する場合などが該当します。
確定申告と聞くと難しく感じるかもしれませんが、適切な書類を参照し、記載ルールに沿って進めれば、正確に申告を行うことが可能です。この記事では、高配当投資で得た配当所得を、確定申告書にどのように記載すれば良いのかを、ステップ形式で分かりやすく解説します。
なぜ配当所得の申告が必要なのか
株式の配当金には通常、支払われる際に税金が源泉徴収されています。しかし、特定の状況下では、源泉徴収された税額とは別に、改めて税金を計算し、申告・納税する、あるいは還付を受けるために確定申告が必要となります。
例えば、複数の証券口座で取引がある場合や、他の所得との合計で税率が変わる場合、または譲渡損失との損益通算を行いたい場合などに、確定申告によって税金を正確に計算し直すことができます。
確定申告書の種類と配当所得の記載場所
個人の確定申告には、所得税申告書を使用します。主に「第一表」と「第二表」がありますが、株式の譲渡所得や配当所得といった「分離課税」の対象となる所得については、別途「第三表(分離課税用)」を使用するのが一般的です。高配当投資で得た配当所得も、申告分離課税を選択する場合や、源泉徴収なし・一般口座での取引に係る配当を申告する場合は、主にこの第三表に記載します。
第三表(分離課税用)の主な記載項目
第三表には、以下のような項目があります。
- 所得の種類: 申告する所得の種類(例: 株式等に係る配当所得)
- 種目: 具体的な所得の内容(例: 国内上場株式)
- 総収入金額: 1年間の配当金の合計額(税引前の金額)
- 必要経費: 所得を得るためにかかった費用(配当所得の場合、通常は経費はありませんが、特定の場合に支払利子などが該当することがあります)
- 所得金額: 総収入金額から必要経費を差し引いた金額
- 源泉徴収税額: 支払われる際にすでに源泉徴収された税額
- 差引所得税額: 確定税額を計算するための金額
これらの項目を、所有している株式やETFから受け取った配当金の情報に基づいて埋めていきます。
配当所得の具体的な記載ステップ
ここでは、国内上場株式等の配当所得を第三表に記載する基本的なステップを解説します。
ステップ1:年間取引報告書などの準備
確定申告書の作成にあたり、最も重要な書類は「年間取引報告書」と「支払通知書」です。
- 年間取引報告書: 特定口座(源泉徴収あり・なし)を開設している証券会社から発行される書類です。1年間の取引(売買や配当金の受け取りなど)がまとめられています。配当所得に関する記載もあります。
- 支払通知書: 一般口座で取引している場合や、特別口座で保管している株式の配当金などについて、発行会社や信託銀行から送られてくる書類です。
これらの書類で、1年間の配当金の総額(税引前)や源泉徴収税額を確認します。
ステップ2:第三表の該当箇所を特定
所得税申告書第三表を用意し、「所得の種類」欄から「株式等に係る配当所得等」の欄を探します。通常、この欄は分離課税の所得として設けられています。
ステップ3:「種目」欄の記載
受け取った配当金がどのような種類の所得かを示します。「国内上場株式」などと記載します。
ステップ4:「総収入金額」欄の記載
年間取引報告書や支払通知書を確認し、該当する配当金の「支払金額」(税引前の金額)の合計額をこの欄に記載します。複数の銘柄や複数の証券会社から配当を受け取っている場合は、それぞれの合計額を計算して記載します。
ステップ5:「必要経費」欄の記載
配当所得の場合、通常は必要経費はありません。特別な事情がない限り、「0」と記載します。
ステップ6:「所得金額」欄の記載
「総収入金額」から「必要経費」を差し引いた金額を記載します。通常は「総収入金額」と同額になります。
ステップ7:「源泉徴収税額」欄の記載
年間取引報告書や支払通知書に記載されている、配当金から源泉徴収された所得税および復興特別所得税の合計額を記載します。これも、複数の源泉徴収がある場合は合計額を計算します。
ステップ8:その他必要な情報の記載
株式の種類(上場株式など)や、所得が生じた会社の情報などを記載する欄がある場合、指示に従って記載します。
ステップ9:第一表、第二表への転記・合算
第三表で計算した分離課税の所得金額や源泉徴収税額の一部は、第一表や第二表の該当する欄に転記し、他の所得と合算して最終的な税額を計算します。例えば、源泉徴収税額の合計は第一表の「源泉徴収税額」欄に転記します。
配当控除の適用を受ける場合
国内上場株式等の配当所得について、総合課税を選択し「配当控除」の適用を受ける場合は、記載方法が異なります。この場合は第三表ではなく、所得税申告書の第一表や第二表の配当に関する欄に記載し、配当控除額を計算して税額から差し引くことになります。配当控除は税負担を軽減できる制度ですが、適用には要件があり、有利不利は所得金額などによって変わるため注意が必要です。ご自身の状況に応じて、どの申告方法が有利か検討することをお勧めします。
まとめ
高配当投資における配当所得の確定申告書への記載は、主に第三表(分離課税用)を使用します。年間取引報告書や支払通知書などの書類を準備し、それぞれの書類に記載された配当金額や源泉徴収税額を正確に転記することが重要です。
確定申告の手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、国税庁のウェブサイトには確定申告書の様式や記載例、また、自宅で申告書を作成できるe-Taxなどの便利なツールも用意されています。これらの情報を活用することで、よりスムーズに申告を進めることができるでしょう。
ご自身の投資状況や受け取った配当の種類に応じて、必要な書類や記載箇所が異なる場合があります。正確な申告のためには、税務署や税理士といった専門家、あるいは国税庁のタックスアンサーなどの公的な情報源を参照することをお勧めします。