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高配当投資の配当所得にかかる税金:年間20万円を超えたら知っておくべきこと

Tags: 高配当投資, 税金, 配当金, 確定申告, 申告不要

高配当投資の配当所得にかかる税金:年間20万円を超えたら知っておくべきこと

高配当投資を始められた皆さんの中には、「配当金がたくさん入ってきたら税金はどうなるんだろう?」「確定申告が必要になるのはいくらから?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、年間で受け取る配当金の金額が一定額を超えると、税金に関する考え方が少し複雑になる場合があります。

この記事では、高配当投資で得られる配当金にかかる税金の基本的な仕組みから、年間配当金が一定額、例えば20万円を超えた場合に知っておくべき税金のこと、そして確定申告の必要性や選択肢について、投資初心者の方にも分かりやすく解説します。

高配当投資で受け取る配当金の税金基礎

まず、高配当投資で日本株などから受け取る配当金は「配当所得」として税金がかかります。原則として、所得税15%、住民税5%の合計20%(2037年までは復興特別所得税が加算され、合計20.315%)の税率で課税されます。

証券口座の種類によって、この税金の扱いは異なります。多くの投資家が利用する「特定口座(源泉徴収あり)」では、配当金を受け取る際に、証券会社がすでにこの税金を差し引いて(源泉徴収)支払ってくれます。そのため、原則として確定申告は不要で、税金の手続きが完了します。

年間配当金20万円という目安の意味

投資の世界で「20万円」という金額が税金の話で出てくる場合、これは主に「給与所得以外の所得が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要になる」という所得税法のルールに関連しています。

しかし、高配当投資で受け取る配当金については、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、すでに税金が源泉徴収されているため、配当所得が20万円を超えたとしても、この「年間20万円以下なら申告不要」というルールとは直接的に関係なく、原則として所得税の確定申告は不要となります。(住民税については、別途申告が必要な場合があります)

【ここでのポイント】 特定口座(源泉徴収あり)を利用し、給与所得などがある方が、配当所得以外の所得が20万円以下の場合、配当所得が20万円を超えても、その配当所得自体は源泉徴収で納税が完結しているため、原則として所得税の確定申告は不要です。

ただし、年間配当金が一定額を超えた場合に、確定申告を「する」ことで税金が有利になるケースがあります。

年間配当金が一定額を超えたら検討したい確定申告の選択肢

特定口座(源泉徴収あり)で源泉徴収された配当所得は、確定申告をしない「申告不要制度」を選択することができます。これが最もシンプルで手間がかかりません。

しかし、年間の配当金が一定額を超えてきた場合、確定申告で「総合課税」または「申告分離課税」を選択することで、税金が安くなる可能性があります。

1. 総合課税を選択する場合

総合課税とは、給与所得など他の所得と配当所得を合算して税額を計算する方法です。この方法を選択するメリットは、「配当控除」が受けられる可能性があることです。配当控除は、国内株式の配当金にかかる税金を軽減するための制度です。総合課税を選択すると、所得金額に応じた税率(所得税率+住民税率)が適用されますが、配当控除によって税負担が軽減される場合があります。

【メリット】 * 配当控除により税金が安くなる可能性がある(特に所得税率が配当への源泉徴収税率(15%)より低い場合や、多額の配当控除を受けられる場合)。

【デメリット】 * 他の所得と合算されるため、全体の所得金額が増え、所得税率や住民税率が高くなる可能性がある。 * 国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料が増加する可能性がある。 * 配偶者控除や扶養控除から外れる可能性がある。 * 確定申告の手続きが必要になる。

年間配当金が多い方や、所得税率が比較的低い方(例:所得がそれほど高くない方)は、総合課税+配当控除で税金が安くなる可能性があります。特に、配当控除は所得金額が高いほど控除額が大きくなる傾向があるため、高額な配当金を受け取っている場合に有利になることがあります。

2. 申告分離課税を選択する場合

申告分離課税とは、配当所得を他の所得から分離して、一律15%(所得税)+5%(住民税)の税率で税額を計算する方法です。特定口座(源泉徴収あり)ですでにこの税率で源泉徴収されているため、基本的には源泉徴収で完結する場合と同じ税率になります。

この方法を選択する主なメリットは、「譲渡損失との損益通算」ができる点です。株式の売却で損失が出た場合、その損失(譲渡損失)と配当所得を相殺して、税負担を軽減することができます。相殺しきれなかった損失は、最大3年間繰り越すことも可能です。

【メリット】 * 株式等の売却損(譲渡損失)と配当所得を損益通算できる。 * 損益通算しきれなかった譲渡損失を3年間繰り越せる。 * 他の所得に影響を与えないため、所得税率の上昇や社会保険料への影響を避けられる場合がある。

【デメリット】 * 配当控除は利用できない。 * 確定申告の手続きが必要になる。

株式投資で売却損が出ている方や、今後売却損が発生する可能性がある方は、申告分離課税を選択して損益通算を行うメリットが大きい場合があります。

どの申告方法を選択すべきか?判断のポイント

年間配当金が一定額を超えた場合に、申告不要、総合課税、申告分離課税のいずれが有利かは、その方の所得状況や他の金融商品の取引状況によって異なります。

判断の目安

ご自身の状況に合わせて、税額をシミュレーションしてみることが最も確実な判断方法です。国税庁のウェブサイトや市販の税金計算ソフト、税理士などに相談することも検討してください。

まとめ

高配当投資で年間一定額以上の配当金を受け取っても、特定口座(源泉徴収あり)であれば原則として確定申告は不要です。しかし、年間配当金が一定額を超えてきた場合は、確定申告で「総合課税」や「申告分離課税」を選択することで、税金が安くなる可能性があります。

特に「年間配当金20万円」という目安は、申告不要制度そのものに直結するわけではありませんが、所得税の確定申告の要否を判断する際の一般的な基準として知られており、それを超える配当金がある場合には、ご自身の税負担を最適化するために申告方法の選択を検討する価値が出てくる金額と言えるでしょう。

ご自身の投資状況や所得に合わせて、どの申告方法が最も有利になるかを理解し、賢く税金と向き合うことが、高配当投資で手取りを増やすために重要です。

次のステップ

これらの情報が、高配当投資の税金に関する疑問解消の一助となれば幸いです。正確な税務上の取り扱いについては、税理士などの専門家や税務署にご確認ください。