高配当投資で税金上の扶養を外れない配当所得の上限額:具体的な計算と注意点
高配当投資は魅力的な運用方法の一つですが、利益が出た場合には税金がかかります。特に、配当所得がある方が税金上の扶養に入っている場合、配当所得の金額によっては扶養から外れてしまう可能性があるため注意が必要です。
この記事では、高配当投資で税金上の扶養を外れない配当所得の上限額について、具体的な計算方法とあわせて解説します。税金上の扶養と配当所得の関係を正しく理解し、安心して高配当投資に取り組むための一助となれば幸いです。
税金上の扶養とは:合計所得金額が重要
税金上の扶養とは、所得税や住民税の計算において、特定の親族を扶養している場合に受けられる所得控除のことです。主に「控除対象扶養親族」に該当するかどうかが判定の基準となります。
この判定において最も重要なのが、扶養される側の「合計所得金額」です。原則として、扶養される側の合計所得金額が年間48万円以下であることが、税金上の扶養親族となるための条件です。
- 所得税の扶養控除: 扶養される側の合計所得金額が48万円以下
- 住民税の扶養控除: 扶養される側の合計所得金額が48万円以下(ただし、自治体によっては所得割がかからない基準が45万円以下など、若干異なる場合があります。)
この「合計所得金額」に、高配当投資で得た配当所得がどのように影響するのかを理解することが重要です。
高配当投資の配当所得は合計所得金額にどう算入される?
高配当投資で得られる配当金は「配当所得」となります。この配当所得が、税金上の扶養判定に関わる「合計所得金額」に算入されるか否かは、配当所得の申告方法によって異なります。
配当所得の申告方法には、主に以下の3つがあります。
- 申告不要制度: 確定申告を行わない方法です。特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、通常はこの制度を選択していることになります。
- 申告分離課税: 確定申告を行い、他の所得とは分離して税金を計算する方法です。
- 総合課税: 確定申告を行い、他の所得と合算して税金を計算する方法です。
それぞれの申告方法を選択した場合の配当所得の取り扱いと、合計所得金額への影響は以下の通りです。
- 申告不要制度を選択した場合: 配当所得は合計所得金額に算入されません。税金の計算が証券口座内で完結するため、税金上の扶養判定においても、この配当所得は影響しないことになります。
- 申告分離課税を選択した場合: 配当所得は合計所得金額に算入されます。確定申告を行うことで、源泉徴収された税金との差額を精算したり、譲渡損失との損益通算を行ったりすることが可能ですが、この場合、配当所得(税引前の金額)が合計所得金額に含まれます。
- 総合課税を選択した場合: 配当所得は合計所得金額に算入されます。確定申告で他の所得と合算して税金を計算し、配当控除の適用を受けることが可能です。この場合も、配当所得(税引前の金額)が合計所得金額に含まれます。
税金上の扶養判定においては、「申告不要制度を選択した場合」は配当所得が合計所得金額に影響しないため、配当所得だけが理由で扶養を外れる心配はありません。しかし、「申告分離課税」や「総合課税」を選択して確定申告を行うと、配当所得が合計所得金額に加算されるため、扶養判定に影響を与える可能性があります。
配当所得のみの場合の税金上の扶養上限額
扶養される側の方が、高配当投資による配当所得のみを得ており、他に所得(給与所得、公的年金等所得など)がない場合を考えます。
この場合、税金上の扶養親族となるための合計所得金額の上限は年間48万円です。
もし、配当所得について申告不要制度を選択している場合は、配当所得は合計所得金額に算入されません。したがって、配当所得がいくらであっても、配当所得だけでは税金上の扶養を外れることはありません。
一方、配当所得について申告分離課税または総合課税を選択し、確定申告を行う場合は、配当所得が合計所得金額に算入されます。この場合の合計所得金額は、配当所得(税引前の金額)そのものとなります。
したがって、配当所得のみで確定申告を行う場合は、年間48万円(税引前の金額)を超える配当所得を得ると、税金上の扶養から外れることになります。
- 例1: 年間配当所得(税引前)が30万円の場合
- 申告不要制度: 合計所得金額 0円 → 扶養内
- 申告分離課税/総合課税(確定申告): 合計所得金額 30万円 → 扶養内
- 例2: 年間配当所得(税引前)が60万円の場合
- 申告不要制度: 合計所得金額 0円 → 扶養内
- 申告分離課税/総合課税(確定申告): 合計所得金額 60万円 → 扶養から外れる
このように、配当所得のみの場合でも、確定申告をするかしないかで扶養判定が変わる可能性があることに注意が必要です。
給与所得など他の所得もある場合の扶養判定
扶養される側の方が、給与所得(パート・アルバイトなど)や公的年金等所得など、配当所得以外の所得も得ている場合は、それらの所得と配当所得を合算して合計所得金額を計算し、48万円以下になるかどうかを判定します。
この場合も、配当所得を申告不要とするか、確定申告するかで合計所得金額への算入方法が異なります。
- 申告不要制度を選択した場合:
配当所得は合計所得金額に算入されません。他の所得だけで合計所得金額が48万円以下になるかを判定します。
- 例:パート収入103万円(給与所得55万円控除後の所得48万円)+配当所得(申告不要)30万円 = 合計所得金額 48万円 → 扶養内(給与所得のみで判定)
- 申告分離課税または総合課税を選択し、確定申告を行う場合:
他の所得と配当所得(税引前)を合算して合計所得金額を計算します。
- 例:パート収入93万円(給与所得55万円控除後の所得38万円)+配当所得(確定申告)30万円 = 合計所得金額 38万円 + 30万円 = 68万円 → 扶養から外れる
特に、給与所得を得ている方が配当所得について確定申告を行う場合、合計所得金額が48万円を超えるかどうかは、給与所得控除(最低55万円)を差し引いた後の給与所得と、配当所得(税引前)の合計で判定することになります。
税金上の扶養に関する注意点
- 社会保険上の扶養とは異なる: 税金上の扶養(所得税・住民税)と、健康保険や年金の社会保険上の扶養は、判定基準が異なります。社会保険上の扶養は、通常、年間の収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であることなどが条件となります。配当所得の場合、社会保険上の扶養においては、通常、受け取り方法に関わらず所得には算入されないことが多いですが、健康保険組合によっては取り扱いが異なる場合があります。必ず加入している健康保険組合にご確認ください。
- NISA口座の配当金: NISA口座内で受け取る上場株式等の配当金は非課税であり、確定申告も不要です。したがって、NISA口座での配当所得は税金上の合計所得金額には算入されず、扶養判定には影響しません。高配当投資を行う上で、税金上の扶養を維持したい場合は、積極的にNISA口座を活用することが有効です。
- 源泉徴収されているのに確定申告が必要な場合: 特定口座(源泉徴収あり)を利用していても、配当所得について申告分離課税や総合課税を選択する場合は確定申告が必要です。申告不要制度を選択している場合は、原則として確定申告は不要ですが、他の所得との合計で税金上の扶養を外れていないか、事前に確認しておくことを推奨します。
まとめ
高配当投資で税金上の扶養を外れないためには、ご自身の配当所得を含めた合計所得金額が年間48万円以下に収まるように管理することが重要です。
特に、配当所得について申告不要制度を選択している場合は、配当所得は合計所得金額に算入されないため、配当所得だけが原因で扶養を外れる心配はありません。これは、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合に多くの方が該当するケースです。
しかし、源泉徴収された税金を取り戻したいなどの理由で確定申告(申告分離課税または総合課税)を選択する場合は、配当所得(税引前)が合計所得金額に算入されます。この場合、配当所得のみであれば年間48万円(税引前)を超えると扶養から外れる可能性があり、他の所得がある場合はそれらとの合算で判定が必要となります。
ご自身の所得状況や配当金の受け取り方法、確定申告をするかしないかで、税金上の扶養判定は変わります。ご家族の扶養に入られている方は、これらの点を十分に理解し、必要に応じてご家族と相談しながら、配当所得の管理や申告方法を検討することをお勧めします。正確な情報は税務署や税理士、またはご利用の証券会社にご確認ください。