高配当投資の住民税:所得税との違い、特別徴収・普通徴収を解説
高配当投資を始めるにあたり、税金について学ぶことは非常に重要です。多くの書籍や情報サイトでは所得税に焦点が当てられがちですが、配当所得には住民税もかかります。住民税の仕組みや納付方法を理解しておくことで、税金に関する手続きをスムーズに行い、ご自身の状況に合わせた最適な方法を選択できるようになります。
この記事では、高配当投資で得た配当金にかかる住民税について、所得税との違いや、特別徴収・普通徴収といった納付方法の選択肢を中心に解説します。この記事をお読みいただくことで、高配当投資における住民税の全体像を把握し、ご自身の税金知識を深める一助となることを目指します。
住民税とは:所得税との基本的な違い
税金には、国に納める「国税」(所得税など)と、お住まいの都道府県や市区町村に納める「地方税」(住民税など)があります。高配当投資で得た配当金には、この両方の税金がかかります。
住民税は、前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して課税され、その年の所得に基づいて翌年度に納付します。一方、所得税は同じ期間の所得に対して課税されますが、原則としてその年中に納税が完了します。
住民税の税率は、通常「所得割」と「均等割」の合計で計算されます。所得割は所得に応じて課税される部分で、税率は標準10%(道府県民税4%、市区町村民税6%)です。均等割は所得にかかわらず定額で課税される部分で、地域によって異なりますが一般的には年額5,000円程度です。配当所得に対しては、このうち所得割の税率が適用されます。
高配当所得にかかる住民税の計算
国内上場株式の配当金にかかる税率は、所得税15%(他に復興特別所得税0.315%)と住民税5%の合計20.315%です。これは、配当金を受け取る際に証券会社によってあらかじめ差し引かれる「源泉徴収」の税率です。
例えば、配当金が10,000円だった場合、源泉徴収される税金は以下のようになります。
- 所得税: 10,000円 × 15.315% = 1,531円
- 住民税: 10,000円 × 5% = 500円
- 合計: 1,531円 + 500円 = 2,031円
このように、配当金から税金が差し引かれた後の金額が手元に入金されます。源泉徴収が行われるため、原則として多くの場合はこの時点で納税が完了し、確定申告は不要となります(申告不要制度)。
住民税の徴収方法:特別徴収と普通徴収
住民税の納付方法には、主に「特別徴収」と「普通徴収」の二つがあります。配当所得にかかる住民税についても、特定の状況下ではこのどちらかの方法で納付することになります。
特別徴収
特別徴収は、給与所得者の場合、勤務先が毎月の給与から住民税を天引きして自治体に納付する方法です。公的年金受給者も同様の仕組みで徴収されます。
通常、給与所得以外の所得(不動産所得や事業所得など)がある場合、その所得にかかる住民税も給与と合算して特別徴収されることがあります。しかし、配当所得については、確定申告を行う際に、この配当所得にかかる住民税だけを別の方法(普通徴収)で納付することを選択できます。
メリットとしては、ご自身で納付手続きを行う必要がない点が挙げられます。デメリットとしては、配当所得を含む住民税の総額が勤務先に通知されるため、副収入があることが勤務先に知られる可能性がある点です。
普通徴収
普通徴収は、ご自身で住民税を納付する方法です。自治体から送付される納付書を使って、金融機関やコンビニエンスストアなどで支払います。納付は通常、年4回に分けて行います。
配当所得にかかる住民税を普通徴収で納付したい場合は、確定申告を行う必要があります。確定申告書第二表の「住民税に関する事項」欄で、「自分で納付(普通徴収)」を選択し、配当所得に関する必要な情報を記入します。これにより、配当所得にかかる住民税が給与分とは切り離されて計算され、別途ご自宅に納付書が送付されることになります。
メリットとしては、配当所得にかかる住民税額が給与に係る住民税額に合算されないため、勤務先に配当所得があることを知られずに済む点が挙げられます。デメリットとしては、ご自身で納付手続きを行う手間がかかる点です。
確定申告による住民税の選択
前述の通り、特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合や、申告不要制度を選択する場合は、原則として確定申告は不要であり、住民税は源泉徴収によって納税が完了しています。
しかし、以下のようなケースでは確定申告を行うことが考えられます。
- 総合課税を選択して配当控除の適用を受けたい場合
- 申告分離課税を選択して、他の上場株式等の譲渡損失と損益通算や繰越控除を行いたい場合
これらの理由で確定申告を行う際に、配当所得にかかる住民税の徴収方法を「特別徴収」にするか「普通徴収」にするかを選択できます。
- 所得税・住民税ともに確定申告に含めて申告(特別徴収相当): 確定申告書の「住民税に関する事項」欄で「特別徴収」に丸をつけたり、特に選択しない場合など。配当所得にかかる住民税も給与所得等と合算され、翌年度の住民税として給与から天引きされる可能性があります。
- 所得税は確定申告、住民税は普通徴収を選択: 確定申告書の「住民税に関する事項」欄で「自分で納付(普通徴収)」に丸をつけることで、配当所得にかかる住民税分の納付書がご自宅に送付されます。
ご自身の状況(確定申告をするかどうか、勤務先に副収入を知られたくないかなど)に合わせて、適切な選択をすることが重要です。
住民税に関する注意点
- NISA口座: NISA口座内で得た配当金や売却益は、所得税・住民税ともに非課税です。NISA口座での取引に関する住民税を気にする必要はありません。
- 複数の証券口座: 複数の証券口座で配当所得がある場合、確定申告を行う際はそれらを合算して申告します。住民税の計算も合算された所得に基づいて行われます。
- 配当控除: 配当所得を総合課税で申告する場合に適用できる配当控除は、所得税と住民税で控除率が異なります。住民税の配当控除率は、所得税より低く設定されています。
まとめ
高配当投資で得られる配当金には、所得税だけでなく住民税も課税されます。多くの場合、源泉徴収によって納税は完了しますが、確定申告を行う場合には、住民税の徴収方法(特別徴収または普通徴収)を選択できます。
ご自身の状況や、勤務先に配当所得があることを知られたくないといったご希望に応じて、確定申告書の「住民税に関する事項」欄を適切に記入することが大切です。
住民税について正しく理解し、ご自身の状況に合わせた手続きを行うことで、安心して高配当投資を続けることができます。ご不明な点がある場合は、税務署や税理士などの専門家、またはお住まいの自治体の税務担当部署にご確認いただくことをお勧めします。