高配当投資 税金と制度ガイド

高配当投資で受け取った配当金の住民税:所得税との違いと申告の注意点

Tags: 高配当投資, 住民税, 配当所得, 税金, 確定申告

はじめに

高配当投資は、定期的に配当金を受け取れる点が魅力の一つです。配当金を受け取る際には税金がかかりますが、所得税と住民税では取り扱いに違いがあるため、特に投資初心者の方は複雑に感じるかもしれません。

この記事では、高配当投資で受け取った配当金にかかる住民税に焦点を当て、所得税との違いや、申告が必要になるケース、そして住民税で損をしないための注意点について分かりやすく解説します。高配当投資で得た配当金について、税金上の疑問や不安を解消し、適切な手続きを行うためにお役立てください。

配当金にかかる税金の基本

株式の配当金は「配当所得」として課税の対象となります。原則として、配当所得には以下の税率で税金がかかります。

合計すると、税率は20.315%となります。多くの証券口座では、配当金が支払われる際にこの税金があらかじめ差し引かれています。これを「源泉徴収」と呼びます。特に特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、原則としてこの源泉徴収で課税が完了し、確定申告は不要とされています。

所得税と住民税の違いで注意すべき点

配当所得にかかる税金は所得税と住民税に分かれていますが、税法上の取り扱いにはいくつか重要な違いがあります。この違いを理解していないと、思わぬ税負担が発生したり、逆に税金を払いすぎてしまったりする可能性があります。

特に注意が必要なのは、「申告不要制度」「申告方法の選択」における所得税と住民税の違いです。

1. 申告不要制度の違い

所得税では、給与所得以外の所得が年間20万円以下の場合は、確定申告が不要となる制度があります。しかし、この「年間20万円以下なら申告不要」というルールは所得税に限ったものです。

住民税には、このような「年間20万円以下の所得なら申告不要」という制度はありません。

したがって、所得税では申告不要でも、住民税の計算においてはすべての所得(給与所得や年金所得の他、株式の配当所得や譲渡所得なども含む)が合算されて課税されるのが原則です。

ただし、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、配当所得にかかる住民税もあらかじめ源泉徴収されており、原則として住民税の申告も不要となります。この場合は、源泉徴収によって住民税の納税が完了しているためです。

問題となるのは、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で取引している場合、あるいは確定申告を選択する場合です。

2. 申告方法の選択による影響

配当所得については、以下のいずれかの方法で課税を受けることができます。

所得税の確定申告でこれらのいずれかを選択した場合、原則としてその選択に基づいて住民税も計算されます。しかし、住民税においては、所得税とは異なる課税方式を選択できる場合があります。例えば、所得税では総合課税を選択し配当控除を適用する一方、住民税ではあえて申告不要(源泉徴収で完了)とする、といった選択が可能になるケースがあります(詳細な手続きや条件は各市区町村にご確認ください)。

この選択によって、住民税の税額が大きく変わる可能性があります。特に配当控除は、所得税では適用されても住民税では適用されない場合があったり、適用によるメリットが小さかったりすることがあります。また、申告分離課税を選択した場合の住民税の計算においても、所得税とは異なる注意点が存在します。

ケース別:住民税の取り扱い

具体的な取引形態に応じて、配当金の住民税の取り扱いを見てみましょう。

特定口座(源泉徴収あり)

この口座を利用している場合、配当金が支払われる際に所得税と住民税がすでに源泉徴収されています。原則としてこれで課税は完了しており、確定申告も住民税の申告も不要です。

ただし、以下のような場合は確定申告を検討することになります。

特定口座(源泉徴収あり)を利用している方が確定申告を行う場合、所得税で選択した申告方法が住民税にも原則として適用されます。この際、所得税ではメリットがあっても、住民税では税金が増えてしまうケースも考えられます。確定申告をする前に、必ず所得税と住民税の両面で影響をシミュレーションすることが重要です。

特定口座(源泉徴収なし)または一般口座

これらの口座で国内上場株式の配当金を受け取った場合、通常は配当支払いの際に所得税・復興特別所得税のみが源泉徴収されます。住民税は源泉徴収されません。

この場合、原則として住民税の申告が必要になります。確定申告を行えば、その内容に基づいて住民税も計算されるため、別途住民税の申告は不要です。しかし、確定申告を行わない場合は、お住まいの市区町村に住民税の申告を行う必要があります。

NISA口座(一般NISA, つみたてNISA, 新NISA)

NISA口座内で高配当株を保有し、受け取った配当金や売却益は、所得税・住民税ともに非課税となります。非課税であるため、確定申告や住民税の申告は一切不要です。高配当投資において税負担をゼロにする最も効果的な方法の一つです。

ただし、NISA口座であっても、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」以外に設定している場合は、配当金が証券会社ではなく銀行口座などに直接振り込まれるため、通常通り税金が源泉徴収されてしまいます。NISAの非課税メリットを最大限に活かすためには、配当金の受取方法を必ず「株式数比例配分方式」に設定してください。

住民税で損をしないためのポイント

  1. 特定口座(源泉徴収あり)なら無理に申告しない: 原則として源泉徴収で課税が完結するため、税務手続きは最もシンプルです。他の所得との合算によって住民税が増える可能性もありません。特別な理由(損益通算や配当控除のメリットが大きい場合など)がない限り、申告不要制度を利用するのが最も手軽で、住民税上も不利になりにくい選択肢です。

  2. 確定申告をする際は住民税への影響も確認: 特定口座(源泉徴収あり)を利用していても確定申告をする場合は、必ず所得税だけでなく住民税の計算結果も確認してください。配当控除は所得税では効果が高くても、住民税では税額が増えるケースもあり得ます。

  3. 住民税に関する詳細は市区町村に確認: 住民税は、お住まいの市区町村が課税主体となります。所得税と住民税で異なる申告方法を選択できるかなど、詳細な手続きや取り扱いは、お住まいの市区町村の税務課にお問い合わせください。

まとめ

高配当投資で受け取る配当金にかかる住民税は、所得税とは異なる注意点があります。特に、所得税の「年間20万円以下なら申告不要」という制度が住民税にはない点、そして確定申告の選択が住民税額に影響する点を理解しておくことが重要です。

税金で損をしないためには、ご自身の投資状況や口座の種類に合わせて、適切な申告方法を選択することが大切です。不明な点や、ご自身の状況に合わせた具体的な計算については、税務署や市区町村の窓口、または税理士などの専門家にご相談ください。