外国株高配当投資の税金ガイド:二重課税調整のやり方を解説
高配当投資にご関心をお持ちいただき、ありがとうございます。このサイトでは、高配当投資を始めるにあたり避けて通れない税金や、お得に投資できる制度について分かりやすく解説しております。
高配当投資の対象として、日本株だけでなく外国株を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。外国株の高配当投資は魅力的な一方で、税金については国内株とは異なる注意点があります。特に「二重課税」という仕組みは、初めて外国株投資をされる方にとって複雑に感じられる部分です。
この記事では、外国株の配当金にかかる税金の仕組み、二重課税とは何か、そしてこの二重課税をどのように調整するのか、具体的な方法について解説いたします。この記事をお読みいただくことで、外国株の高配当投資における税金への理解を深め、より安心して投資を進めるための知識を得ていただけるでしょう。
外国株の配当金にかかる税金の仕組み
外国株を保有し、配当金を受け取った場合、税金は二段階で課税されることが一般的です。
- 源泉地国での課税: まず、配当金を支払う会社がある国(源泉地国)で税金が差し引かれます。例えば米国株の場合、原則として配当金に対し10%の税金が源泉徴収されます。
- 日本での課税: その後、源泉地国で税金が差し引かれた後の配当金が日本の証券会社を通じて支払われますが、この配当金に対しても日本で税金が課税されます。日本の所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%が原則として課税されます。
このように、外国株の配当金には、源泉地国と日本の両方で税金がかかることになります。これが「二重課税」と呼ばれる状態です。
二重課税とは何か
二重課税とは、同じ所得に対して二つの国や地域で税金が課される状態を指します。外国株の配当金の場合、源泉地国で税金が引かれ、さらに日本でも税金が課されるため、合計の税負担が国内株の配当金にかかる税率(20.315%)よりも高くなってしまいます。
例えば、米国株の配当金100ドルを例に考えてみましょう。
- まず、米国で10%が源泉徴収されます。差し引かれる税金は10ドルです。
- 手元に入るのは90ドルですが、この90ドルに対し日本で20.315%が課税されます。この場合、90ドルに対する税金は約18.28ドルです。
- 結果として、元の配当金100ドルに対し、米国で10ドル、日本で約18.28ドル、合計で約28.28ドルの税金がかかることになります。これは、国内株の場合の20.315%と比較して税負担が大きくなっています。
この二重課税による過度な税負担を軽減するための制度が「外国税額控除」です。
二重課税調整のやり方:外国税額控除
外国税額控除とは、外国で課税された税金の一部を、日本の所得税や住民税から差し引く(控除する)ことができる制度です。この制度を利用することで、二重課税による税負担を軽減し、国内株の配当金にかかる税負担に近い水準に調整することが可能です。
外国税額控除の適用を受けるためには、原則として確定申告を行う必要があります。
確定申告による外国税額控除の手続き
確定申告で外国税額控除を適用するための一般的な流れは以下の通りです。
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必要な書類の準備:
- 配当金支払いの通知書や年間取引報告書など、外国税が源泉徴収されたことを証明できる書類。
- 確定申告書AまたはB(配当所得がある場合はB)、および外国税額控除に関する明細書。これらの書類は税務署や国税庁のウェブサイトから入手できます。
- マイナンバーカードなどの本人確認書類。
- 銀行口座情報(還付がある場合)。
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確定申告書の作成:
- 受け取った外国株の配当所得を、総合課税または申告分離課税として申告します。一般的に、配当所得については申告分離課税を選択することが多いですが、他の所得状況によっては総合課税が有利な場合もあります。
- 外国税額控除に関する明細書に、外国で支払った税額などを正確に記入します。控除できる金額には上限があります。
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税務署への提出:
- 作成した確定申告書一式を、所轄の税務署に提出します。e-Tax(電子申告)を利用することも可能です。
- 確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。この期間内に手続きを行う必要があります。
特定口座(源泉徴収あり)と外国税額控除
多くの証券会社では、外国株取引に対応した特定口座(源泉徴収あり)を提供しています。特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、通常、日本での税金は証券会社が自動的に計算し源泉徴収してくれます。
しかし、外国税額控除を適用するためには、原則としてご自身で確定申告を行う必要があります。一部の証券会社では、特定口座内で外国税額控除を自動的に計算・適用するサービスを提供している場合もありますが、これは証券会社によって対応が異なります。ご自身の利用している証券会社の対応を必ずご確認ください。
自動的に適用されない場合でも、特定口座年間取引報告書を利用することで、比較的容易に確定申告を行うことができます。
NISA口座での外国株投資と税金
NISA口座(一般NISA、つみたてNISA、新NISAなど)を利用して外国株に投資した場合、日本国内での配当金にかかる税金(所得税・住民税 計20.315%)は非課税となります。
重要な点として、NISA口座を利用しても、源泉地国での税金(例:米国での10%)は非課税になりません。 したがって、NISA口座で外国株の配当金を受け取った場合も、源泉地国で税金は差し引かれます。
また、NISA口座内の取引は確定申告が不要なため、外国税額控除を利用して源泉地国で支払った税金を取り戻すことはできません。NISA口座の非課税メリットは日本国内での課税に対してのみ適用されるため、外国株の配当金については、源泉地国での税金分は税負担として残ることになります。
この点を理解した上で、外国株を高配当目的で投資する際にNISA口座を利用するかどうかを判断することが重要です。
まとめ:外国株高配当投資と税金
外国株の高配当投資は魅力的な選択肢ですが、税金については国内株と異なり「二重課税」が発生する点に注意が必要です。
- 外国株の配当金には、源泉地国と日本の両方で税金がかかります。
- この二重課税による税負担を軽減するためには、原則として確定申告を行い、外国税額控除の適用を受ける必要があります。
- 特定口座(源泉徴収あり)をご利用の場合でも、原則としてご自身での確定申告が必要です(一部証券会社では自動計算サービスあり)。
- NISA口座を利用した場合、日本国内での課税は非課税となりますが、源泉地国での課税は発生し、外国税額控除も利用できません。
外国税額控除の手続きには手間がかかりますが、正しく理解し実行することで、二重課税による不利益を避けることができます。ご自身の投資スタイルや口座の種類に合わせて、最適な税金対策を検討することをおすすめします。ご不明な点は、税務署や税理士、またはご利用の証券会社にご確認ください。