配当金受け取り方法別 税金と手続きの解説【高配当投資初心者向け】
はじめに:配当金の受け取り方法が税金に影響する?
高配当株への投資を始められた、あるいはこれから始めようとされている皆様、こんにちは。このサイトでは、高配当投資における税金や制度について分かりやすく解説しています。
株式投資で得られる利益の一つに「配当金」があります。企業が利益の一部を株主に分配するもので、高配当投資の魅力の一つです。この配当金を受け取る方法にはいくつか種類があり、実はその選び方によって、税金に関する手続きや、場合によっては手取り額に影響が出ることがあります。
特に投資初心者の方にとって、「税金」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、ご自身の投資スタイルに合った受け取り方を選ぶことで、税金の手続きをシンプルにしたり、税負担を最適化したりすることが可能です。
この記事では、主要な配当金の受け取り方法をご紹介し、それぞれの方法における税金に関するポイントや手続きについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。この記事を読んでいただくことで、ご自身の配当金がどのように支払われ、税金がどのようにかかるのかを正しく理解し、今後の高配当投資に役立てていただければ幸いです。
配当金の主な受け取り方法
国内の株式から得られる配当金には、主に以下の4つの受け取り方法があります。
- 株式数比例配分方式(証券会社での受領)
- 登録配当金受領口座方式(銀行口座での受領)
- 個別銘柄指定方式(銀行口座での受領)
- 配当金領収証方式(郵便局での受領)
現在では、証券口座を通じて受け取る「株式数比例配分方式」が最も一般的で、多くの投資家が利用しています。しかし、意図せず別の方法になっている場合や、過去に設定したままになっている場合もありますので、ご自身の証券口座の設定を確認してみることをお勧めします。
それぞれの方法について、税金との関連を見ていきましょう。
受け取り方法ごとの税金と手続き
配当金には、通常20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。この税金がどのように徴収されるか、また確定申告が必要になるかどうかが、受け取り方法によって異なります。
1. 株式数比例配分方式(証券会社での受領)
- 概要: 保有している証券会社の口座で配当金を受け取る方法です。複数の証券会社に同じ銘柄の株式を持っている場合、それぞれの証券口座に株式数に応じて配当金が入金されます。現在、国内株の配当金受け取り方法としては最も普及しています。
- 税金:
- 特定口座(源泉徴収あり)の場合: 証券会社が配当金が支払われる際に、あらかじめ税金(20.315%)を差し引いて(これを「源泉徴収」といいます)入金してくれます。この場合、原則として確定申告は不要です。税金に関する手続きが非常に簡便になります。
- 特定口座(源泉徴収なし)や一般口座の場合: この方式を選択していても、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座では源泉徴収が行われません。受け取った配当金に対して、ご自身で確定申告が必要になります。
- NISA口座の場合: NISA口座(一般NISA、つみたてNISA、新NISAの成長投資枠・つみたて投資枠いずれも)で保有している株式の配当金をこの方式で受け取ると、税金が一切かかりません(非課税)。NISA口座の非課税メリットを最大限に活用するためには、この方式を選択することが必須です。
- メリット: 税金の手続きがシンプル(特定口座 源泉徴収あり、NISA口座の場合)。NISA口座の非課税メリットを享受できる。複数の証券会社で保有していても自動で振り分けられる。
- デメリット: 特にありませんが、対応していない証券会社はごく稀に存在します。
2. 登録配当金受領口座方式(銀行口座での受領)
- 概要: あらかじめ指定した一つの銀行口座で、全ての保有銘柄(国内上場株式等)の配当金を受け取る方法です。
- 税金:
- この方式を選択した場合、配当金は指定した銀行口座に直接振り込まれます。税金は、配当金が支払われる際に源泉徴収(20.315%)されます。
- ただし、特定口座(源泉徴収あり)で株式を保有している場合でも、この方式で受け取った配当金は「特定口座内の取引」とはみなされません。そのため、株式の売却益(譲渡所得)と配当所得を合算して税金を計算する「損益通算」や、「申告分離課税」による課税を希望する場合は、確定申告が必要になります。確定申告をしない場合は、源泉徴収のみで課税関係は終了します(これを「申告不要制度」といいます)が、損益通算などのメリットは受けられません。
- NISA口座で保有している株式の配当金をこの方式で受け取った場合、残念ながら非課税になりません。源泉徴収が行われてしまいます。NISAの非課税メリットを活かすためには、株式数比例配分方式である必要があります。
- メリット: 保有銘柄に関わらず、一つの銀行口座でまとめて配当金を受け取れるため、入金管理がしやすい。
- デメリット: 特定口座(源泉徴収あり)で保有していても、損益通算などを行うには確定申告が必要になる。NISA口座の配当金が非課税にならない。
3. 個別銘柄指定方式(銀行口座での受領)
- 概要: 銘柄ごとに、配当金の振込先となる銀行口座を指定する方法です。
- 税金: 登録配当金受領口座方式と同様、配当金は指定した銀行口座に振り込まれ、源泉徴収(20.315%)されます。この方式も、損益通算や申告分離課税を適用するためには確定申告が必要になります。NISA口座で保有している株式の配当金も非課税になりません。
- メリット: 銘柄ごとに異なる銀行口座で受け取りたい場合に利用できます。(ただし、そのようなニーズは一般的ではありません。)
- デメリット: 銘柄が増えるとその数だけ管理が必要になる。税金面やNISAの扱いは登録配当金受領口座方式と同様のデメリットがあります。
4. 配当金領収証方式(郵便局での受領)
- 概要: 企業から送られてくる「配当金領収証」をゆうちょ銀行または郵便局に持参して、窓口で現金として配当金を受け取る方法です。
- 税金:
- 配当金を受け取る際に税金は源泉徴収(20.315%)されます。
- この方式の場合、受け取った配当金は総合課税の対象となります(原則として配当所得として給与所得などと合算して税金を計算します)。特定口座やNISA口座とは連携しないため、これらの口座のメリットは活かせません。
- 株式の売却損との損益通算はできません。また、他の配当所得や譲渡所得とまとめて「申告分離課税」を選択することもできません。確定申告をする場合も、総合課税として申告することになります。
- メリット: 証券口座や銀行口座を持っていなくても配当金を受け取れる唯一の方法です。
- デメリット: 確定申告をする場合、原則として総合課税となり、他の所得との損益通算ができません。配当金領収証を紛失するリスクがあります。NISA口座のメリットも活かせません。
高配当投資家にとって推奨される受け取り方法は?
高配当投資をされている方、特にこれから始めようとしている方にとって、税金の手続きが簡単で、かつNISA口座の非課税メリットを最大限に活かせる「株式数比例配分方式」が最も推奨されます。
- 特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合: 株式数比例配分方式に設定しておけば、配当金にかかる税金が証券会社によって源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。年間取引報告書にも配当金の受領額と源泉徴収税額が記載され、管理も容易です。
- NISA口座を利用している場合: 株式数比例配分方式を選択することで、NISA口座で保有する株式から得られる配当金が非課税になります。これはNISA制度の最大のメリットの一つであり、これを逃さないためにもこの方式が必須です。
特定口座(源泉徴収なし)や一般口座を利用している方、あるいは配当所得と株式の売却損を損益通算したい方などは、確定申告をすることで税金を取り戻せる場合があります。しかし、その場合でも、NISA口座の非課税メリットを享受するためには、NISA口座の配当金だけは株式数比例配分方式で受け取る必要があります。
ご自身の配当金の受け取り方法がどうなっているか不明な場合は、ご利用の証券会社のウェブサイトやカスタマーサービスで確認し、必要に応じて「株式数比例配分方式」に変更されることをお勧めします。
まとめ
この記事では、配当金の主な受け取り方法と、それぞれの税金・手続きについて解説しました。
| 受け取り方法 | 特徴 | 特定口座(源泉徴収あり)での税金/手続き | NISA口座での税金/手続き | 確定申告の必要性(損益通算等) | | :----------------------- | :------------------------------------- | :------------------------------------ | :---------------------- | :--------------------------- | | 株式数比例配分方式 | 証券口座で受け取り。最も一般的 | 源泉徴収あり、確定申告原則不要 | 非課税 | 申告分離課税も選択可 | | 登録配当金受領口座方式 | 指定銀行口座でまとめて受け取り | 源泉徴収あり | 課税される | 損益通算等には確定申告必要 | | 個別銘柄指定方式 | 銘柄ごとに指定銀行口座で受け取り | 源泉徴収あり | 課税される | 損益通算等には確定申告必要 | | 配当金領収証方式 | 郵便局で現金受領 | 源泉徴収あり | 課税される | 確定申告必要(総合課税) |
ご覧のように、高配当投資初心者の方や、NISA制度を活用している方にとっては、「株式数比例配分方式」が税金の手続きをシンプルにし、非課税メリットを享受できる最適な選択肢と言えます。
ご自身の配当金受け取り方法を確認し、必要に応じて変更することで、より効率的でスムーズな高配当投資を進めていくことができるでしょう。もし手続きについて不明な点があれば、ご利用の証券会社にお問い合わせください。
税金や制度は複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつ理解を深めていくことで、高配当投資のメリットを最大限に享受できるようになります。この記事がその一助となれば幸いです。